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検索サイトにおける検索結果の削除について

2017-03-02

平成29年1月31日、過去に逮捕歴のある男性が検索サイト「google」に表示される検索結果の削除を求めた裁判で、最高裁が、削除を認めない決定を出しました。この決定は、最高裁が初めて検索結果の削除についての一応の判断基準を示したものとして注目されました。今回は、この最高裁の決定についてみていきたいと思います。

このケースは、過去に罰金刑を受けた男性が、事件後3年を経過してもまだ名前と住所で検索すると、犯罪に関する記事が表示されていました。そこで男性は、さいたま地方裁判所に対し、検索結果の削除を求める仮処分を申立てました。

さいたま地裁では、平成27年12月に「一度は逮捕歴を報道され社会に知られてしまった犯罪者といえども、人格権として私生活を尊重されるべき権利を有し、更生を妨げられない利益を有するのであるから、犯罪の性質等にもよるが、ある程度の期間が経過した後は過去の犯罪を社会から『忘れられる権利』を有するというべきである」として、該当記事の削除を認めました。

これに対し、google側が東京高等裁判所に抗告をしました。東京高等裁判所では、本件犯行を知られること自体が回復不可能な損害であるとしても、そのことにより直ちに受忍限度を超える重大な支障が生じるとは認められないこと等を考慮すると、表現の自由及び知る権利の保護が優越するというべきと判示し、記事の削除を認めませんでした。また「忘れられる権利」は名誉権やプライバシー権に基づく差し止め請求と同じものであり、忘れられる権利として独立して判断する必要がないとも指摘しました。

そして、平成29年1月31日、最高裁は、①表示された事実の性質・内容、②プライバシーに属する事実が伝達される範囲とその者が被る具体的被害の程度、③その者の社会的地位や影響力、④記事の目的や意義、⑤記事が掲載された時の社会的状況とその後の変化、⑥事実を掲載する必要性など、事実を公表されない法的利益と情報を検索結果として提供する理由に関する諸事情を比較衡量し、事実を公表されない法的利益が優越することが明らかな場合には、検索事業者に対し、情報を検索結果から削除することを求めることができるものと解するのが相当であるとの判断基準を示しました。その上で、児童買春が社会的に強い非難の対象であり、今なお公共の利害に関する事項である等として、検索結果の削除を認めない決定をしました。

現在、インターネット上の情報の複製と頒布は容易であり、多数のウェブページに個人の名誉を侵害し、あるいはプライバシーを暴露する記載がされると、個々のウェブページ管理者に対する削除請求は、極めて困難です。そのような場合、名誉ないしプライバシーの実効的な保護のためには、検索サービスによる検索結果に表示されないようにする措置をとらざるを得ない場合があることは否定できません。今回の最高裁決定では、検索結果の削除の判断基準についての考慮要素を示しました。しかし、明確な判断基準が示されたとはいえず、検索結果の削除の判断基準の形成については、今後一層の事例の集積が待たれるところです。

消費者契約法における「勧誘」の意味

2017-02-12

平成29年1月24日、最高裁が、消費者契約法に定める「勧誘」の意味について、初めての判断を示しました。実務運用はもとおり、今後の消費者契約法の改正にも影響を与える可能性がありますので、今回はこの判決を見ていきたいと思います。

まず、消費者契約法4条1項は次のとおり定めています。

「消費者は、事業者が消費者契約の締結について勧誘をするに際し、当該消費者に対して次の各号に掲げる行為をしたことにより当該各号に定める誤認をし、それによって当該消費者契約の申込み又はその承諾の意思表示をしたときは、これを取り消すことができる。

①重要事項について事実と異なることを告げること。 当該告げられた内容が事実であるとの誤認

②物品、権利、役務その他の当該消費者契約の目的となるものに関し、将来におけるその価額、将来において当該消費者が受け取るべき金額その他の将来における変動が不確実な事項につき断定的判断を提供すること。 当該提供された断定的判断の内容が確実であるとの誤認」

この裁判では、広告が、消費者契約法に定める「勧誘」に該当するかが争われました。
最高裁は、消費者契約法が、消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力の格差に鑑み、消費者の利益の擁護を図ること等を目的として(1条)、勧誘に際して重要事項について事実と異なることを告げるなどの一定の行為をした場合に、契約を取り消すことができるものとしている旨述べた上で、新聞広告等により不特定多数の消費者に向けて働きかけを行うときは、当該働きかけが個別の消費者の意思形成に直接影響を与えることもあり得るから、広告のように、「事業者等による働きかけが不特定多数の消費者に向けられたものであったとしても、そのことから直ちにその働きかけが『勧誘』に当たらないということはできない」としました。

消費者契約法は、高齢化の更なる進展を始めとした社会経済情勢の変化に適切に対応すること等を背景として、平成28年5月に改正され、6月に改正消費者契約法が公布されています。

この消費者契約法の改正にあたっては、「勧誘」の要件に広告一般を含めるかどうかについても議論されましたが、広告関連団体が反対を表明し、専門調査会の委員の間でも合意に至らなかったことから、平成28年6月に公布された改正消契法には盛り込まれず、2~3年以内に結論を出す積み残し課題とされていました。しかしながら、第2次改正に向けた議論の中で、広告規制を巡る「勧誘要件の在り方」が優先的に取り組むべき課題として挙げられていますので、最高裁が「広告も『勧誘』に当たりうる」としたことで、今後の議論の行方が注目されます。

「訴え提起前の和解」手続の流れ

2017-01-31

「訴え提起前の和解」手続の流れについてご説明します。

 

1 当事者間の合意

 当事者間で生じた民事上の争いについて,話し合いにより合意に達します。通常は当事者間で合意内容について合意書を作成します。「訴え提起前の和解」手続を採ることについても合意しておきます。

2 申立て

 当事者の一方が,当事者間の争いの内容や合意の内容を記載した申立書,当事者目録,物件目録,和解条項案等を作成し必要書類とともに簡易裁判所へ申立てを行います。相手方の住所又は主たる営業所の所在地を管轄する簡易裁判所に申立てを行うのが原則ですが,当事者間で事前に管轄の合意があれば合意した簡易裁判所に申立てることもできます。申立手数料は原則1件につき2,000円です。

3 申立て書類の審査

 裁判所が申立て書類(主に和解条項案)について審査を行います。和解条項について多少の修正指示が入ることが多いでしょう。

4 期日の調整と相手方への書類の送付

 期日は一度だけですので,当事者双方が出頭できる日時を事前に調整します。裁判所から複数の候補日時が提示されることもあります。

 期日が決まりましたら,裁判所が相手方へ期日呼出状や申立て書類の写し等を送付します。

5 クリーンコピーの提出

 4と前後して,裁判所へ和解調書正本に使用される和解条項や目録のクリーンコピーを必要部数提出します。これらはそのまま和解調書正本に使用されますので,ページ番号は付しません。

6 期日に出頭

 期日当日,裁判所に当事者が出頭します。弁護士ではなく当事者が出頭する場合は,本人確認資料(免許証など)を持参する必要があります。法人の従業員が出頭する場合は,代理人資格を確認するために事前に提出すべき書類がありますので注意が必要です。

 当事者双方が揃い,本人確認が済みましたら,裁判官が和解条項等を読み上げ和解内容に誤りがないか等確認をします。問題がなければ和解条項等に記載のとおりの内容で和解成立です。

 和解調書は和解成立後すぐに正本が作成され,当事者に交付されます。和解調書正本は,万一の時に債務名義をなりますので,大切に保管しましょう。

 

 なお,裁判所によりますが,通常は申立てから期日まで最低でも3週間~1ヶ月程度が見込まれます。建物明渡日や金銭支払日が迫っている場合は書類に不備・不足がないよう注意して早急に申立をすべきでしょう。

「訴え提起前の和解」とは?

2017-01-22

「訴え提起前の和解」とは、文字通り、民事上の争いについて訴えを提起することなく和解を成立させる裁判上の和解のことです。

訴えを提起する前なのに、裁判上の和解を成立させる??

日本語として少しおかしいと思うかも知れませんが、これは民事訴訟法に定められている和解手続です。

 

当事者間に民事上の争いが生じた場合、訴訟などによらず話し合いにより解決できることは最も望ましいことです。しかし、話し合いにより何らかの合意に達したとしても、その合意内容に従って当事者が行動しなければ意味がありません。話し合いに費やした時間が無駄になるばかりか、争いがより大きくなってしまうこともあるでしょう。

せっかく話し合いにより合意に達したのですから、合意内容に従って確実に行動することを互いに促し、また、約束を違える場合には直ちに強制執行が出来るようにしたいものです。

 

このような場合、簡易裁判所に「訴え提起前の和解」を申立てることが有用です。

この手続は、簡易裁判所に当事者が赴き、裁判官とともに合意内容を確認し、和解調書を作成してもらうものです。作成された和解調書は判決と同一の効力を有しますので、合意内容に従って確実に行動することを互いに促す効果が期待でき、また、もし当事者の一方が約束を違えた場合には他方の当事者は直ちに強制執行をすることが出来るようになります。

 この手続の流れについては、次回ご説明いたします。

 

預貯金も遺産分割の対象へ

2017-01-16

2016年12月19日に、最高裁が、預貯金と遺産分割に関する決定を出しました。実務上、影響が大きいと思われるため、ここで紹介したいと思います。

これまでの最高裁判例等は、預貯金の遺産分割について、原則として、預貯金は、被相続人の死亡により、相続人らに当然に分割され、遺産分割の対象にはならないとしてきました。

しかし、先ほどの最高裁決定は、「共同相続された普通預金債権、通常貯金債権及び定期貯金債権は、いずれも、相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく、遺産分割の対象となるものと解するのが相当である。」とし、「上記見解と異なる当裁判所の判例は、いずれも変更すべきである。」と判示したのです。

この判例変更により、預貯金が遺産分割の対象に含まれることが明確になったことで、預貯金による分割内容の調整が可能となり、相続人間の公平な分割につながるのではないかと思っています。もっとも、これまで認められつつあった金融機関に対する各相続人からの法定相続分の払い戻し請求については、拒否される可能性が高いので注意が必要です。